東日本大震災は、終わってない。
阪神・淡路大震災も、まだ、終わってない。
  • 災害発生前
  • デザイン
  • SPREAD
  • デザイナー 
  • デザイン・クリエイティブセンター神戸+ボランティア36名
  • 阪神・ 淡路大震災+クリエイティブ
    タイムライン マッピング プロジェクト

これまでの震災を調べると、
これからの防災が見えてくる。

阪神・ 淡路大震災+クリエイティブ タイムライン マッピング プロジェクト(以下、TMプロジェクト)は、「東日本大震災に対して、クリエイターは何ができるか」というSPREADの小林弘和氏と山田春奈氏の自身への問いが、その立ち上げのきっかけとなった。

TMプロジェクトは2011年11月に公開され、阪神・淡路大震災後、「アート」「デザイン」「建築」の分野でどのような支援活動を行ったのかをリサーチし、その情報を提示することで、震災に向き合おうとするクリエイターに、どのタイミングで何が必要で、また何が足りなかったのかという気づきを与えるものとなっている。

しかしなぜ今、阪神・淡路大震災なのか。SPREADは当初、東日本大震災の復興におけるクリエイターの指標の制作を考えていたが、このアイデアの相談を受けたデザイン・クリエイティブセンター神戸・副センター長の永田宏和氏から、「今後の進展がまだ見えない東日本大震災の復興に対して、推測を元に指標を示すことは、誤解を招く可能性がある」という指摘を受けたという。

今目の前にある地震ではなく、あえて過去の地震のリサーチから始め、その事実からこれからできることを探っていくという発想で、クリエイターの活動を促すプロジェクトとなっている。

  • 「アート」「デザイン」「建築」の3つの分野における阪神・淡路大震災の復興支援を記したタイムラインマッピング。
  • 2013年1月にデザイン・クリエイティブセンター神戸で開かれた展覧会。
  • 2013年、東京で開かれた展覧会の様子。

タイムラインで見せると、
過去と未来がひと目でわかる。

「タイムラインマッピング」とタイトルにあるように、阪神・淡路大震災の支援活動はタイムライン=時間軸という形でまとめられている。この「見せ方」は、2005年からSPREADが取り組んできた、一日の行動を21色のカラーに置き換え、24時間の時間軸に沿って記録するというアートワーク「Life Stripe」が一つのヒントとなっている。一日を色彩のパターンで表現することで、「その日を振り返り」、この先どんな生活を送っていくかという気付きに促すというコンセプトは、「あの日(過去の震災)を振り返り」、今後に活かすというTMプロジェクトのコンセプトと重なった。

web上に展開しているTMプロジェクトのページを開くと、タイムラインのマッピング上に、「東日本大震災から何年と何日経ったか」という縦に伸びるラインが出てくる。阪神・淡路大震災の発災から「18年」という時系列化した過去に、今現在の東日本大震災発災から「2年半」を重ね合わせると、まだまだその先は長く、やるべきことが多いことが分かる。

タイムラインで表現することによって、同時期の「アート」「建築」「デザイン」のクリエイティブ活動の動きだけでなく、過去・現在・未来という時間も一元化して見ることができる。

  • SPREADのLife Stripe。一日の行動を21色のカラーに置き換えて24時間記録する「生活の模様」。
  • SPREADが当初考えていた、東日本大震災のマッピング。「わかりやすい」という声もあったが、あくまでも想像上のマッピングだった。
  • 東日本大震災からどのぐらい経ったのかが、マッピング上に示される。

未来に向けた取り組みは、
記憶を残すツールにもなる。

TMプロジェクトでは、タイムラインの年表のほか、各活動の概要やインタビュー、気づきのレポートなどさまざまなコンテンツを盛りこんでいる。これらのリサーチは、事務局となっているデザイン・クリエイティブセンター神戸の呼びかけに応じた有志の神戸市民や学生など40名が担当している。

阪神・淡路大震災を経験していなかったSPREADの二人が、このプロジェクトのキックオフミーティングを神戸で開いた時、有志として参加した人が被災体験を語り、また被災経験のない世代も「被災した町の住民として何かしたい」と話したのを聞き、「まだ阪神・淡路大震災は終わっていない」ことを再認識したという。

インターネットが普及していなかった18年前の情報を調べるには、大学や専門機関の資料を直接当たり、当時の関係者を探してインタビューするという、まさに自らの手と足を使うものとなった。そこに神戸市民や学生が参加する意義は大きい。

阪神・淡路大震災からすでに18年が経ち、震災が起きた1月17日の他は、神戸では当時を振り返る機会が、極端に少なくなってきている。TMプロジェクトはこれからの震災への“道標”になるだけでなく、プロジェクトの継続自体が、被災地の関係者たちの記憶を呼び起こし、震災の教訓を紡いでいくツールとなっている。

  • TMプロジェクトのキックオフミーティング。それぞれが自己紹介と参加した理由について話した。
  • 東京在住のSPREAD(中央)の二人は、できるだけ神戸に来て、有志の人たちとミーティングを行った
  • 支援活動を実際に行ったキーパーソンにヒアリングに伺い、当時の様子を聞く。